倒産処理の基本と私的整理・法的整理

倒産処理の基本と私的整理・法的整理

事業再生において、収益の改善や資金調達だけでは不十分な場合は、「倒産処理」によって借金の免除などをしてもらう必要があります。
倒産処理には10通りの手続きがありますので、ひとつひとつの違いやメリット・デメリットを分かりやすく解説します。

倒産処理とは

お金を借りている債権者に対する返済を一時的に棚上げし、再建計画や返済計画をつくって債権者と交渉を行い、合意した内容にそって負債カットなどを行う一連の手続きを「倒産処理」といいます。

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倒産処理の手続きには、裁判所で法律にのっとって決める「法的整理」と、話し合いで決める「私的整理」があります。
ちなみに倒産するのが個人の場合は、私的整理を「任意整理」と呼ぶことも多いです。

私的整理と法的整理、どちらを選ぶべき?

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法的整理では、民事再生法や破産法などの各種倒産法にのっとって、裁判所が強制力をもって債務を整理します(借金の免除など)。

一方の私的整理では、お金の借り手と貸し手が裁判所外での“私的な”話し合いによって返済条件の変更や借金の整理を行う手続きを指します。

法的整理では、仕入先などの取引先企業も含めて、すべての債権者を対象として支払いや負債のカットなどを要請します。このような手続きは窮地に陥った企業の場合は必要となりますが、法的整理手続きに入ったことが世間に公表されることで、顧客や仕入れ先が離れてしまうこともあります。

法的整理は負債カットの効果が大きい一方で、企業価値の棄損によってすぐに再建することも難しくなる「最後の手段」といえるでしょう。

一方の私的整理ですが、こちらは金融機関のみとの交渉となることが一般的です。取引先企業には通知せずに非公開の手続で進行することができるため、法的整理に比べて世間の評価へ影響することは少ないといえます。

したがって倒産処理を進める場合は、まず私的整理による再建の可能性を検討していくことになります。

私的整理と法的性整理には、それぞれいくつかの手続きの種類があります。

私的整理の類型

一般的な分類としては、一定のルールに基づいて実施されるものを「準則型私的整理」、それ以外を「純粋な私的整理」と括ることがあります。さらに「準則型私的整理」は5つに分類されます。

→私的整理の詳細を見る

法的整理の類型

法的整理の手続きは、再建型と清算型に分けることができます。

再建型
事業の継続を前提とした法的整理手続きです。事業を継続しながら再生計画を進めていきます。再建型には「民事再生」と「会社更生」の2つがあります。
一般的には「民事再生」が利用されます。

清算型
事業をたたむことを前提とした手続きです。企業が倒産した段階で、そのすべての資産を現金に換え、債権者に返せるだけ返して終わりにする、つまり清算してしまおうというものです。したがって再建型とは異なり、会社は消滅します。
一般的には「破産」が利用されます。

法的整理の詳細を見る

なお事業再生の場合は、もちろん事業の継続が前提ですので「再建型」が利用されますが、場合によっては会社を分割してその一部は「清算型」で消滅させる、というやり方もあります。

そもそも整理とは?
倒産処理における「整理」とは、「債務整理」のことです。

債務とは、誰かにお金を払ったり物を渡さなければならない法律上の義務です。ほとんどは銀行からの借入金です。その他の債務としては、取引の過程で発生した「買掛金」や「業務委託料」、従業員に支払うべき「給与」や「退職金」、そして「不動産賃料」などがあります。

債務整理とは、さまざまな債務について「どのような優先順位で返済・免除していくのか」、「返済や免除の条件はどうするか」といったことを交渉しながら明確にして、その処理を実行していくことをいいます。

法にのっとって債務を整理するのが「法的整理(法的な債務整理)」、私的な話し合いで債務を整理するのが「私的整理(私的な債務整理)」というわけです。

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